モールスキンジャケット
古着というとアメリカの古着が一般的で、 M65などのミリタリーやA2なんかのレザー、Levi’sやLeeのデニムは古着に興味のない方でも知ってるのではないでしょうか。今回、ヨーロッパに視点を変えて、フランスの古着を紹介して行きます。
ヨーロッパの古着が好きな方はご存知かと思いますが、フレンチワークジャケットと言われる戦前に労働者が着ていた作業着で、今回紹介するモールスキンジャケットは、炭鉱で働いていた方々が実際に着用して来たものになります。
モールスキンもジーンズのような頑丈なコットン生地で作られていて、年代もヴィンテージジーンズと同時期に使われていたので、ジーンズのように独特のエージングが進んだものが多く非常に魅力的です。今回はモールスキンで作られたフレンチワークジャケットを紹介して行きます。
ジーンズと異なる風合い
モールスキンと言う生地は、ジーンズより少し細めの糸を使っているので、独特の光沢感と、柔らかい風合いがあります。エージングはジーンズと異なり、ジーンズで良く言われるヒゲやハチノスと言った縦落ちと言われる縞状に色落ちをしていく感じと異なり、面で色落ちしたり全体的に色落ちしたり、擦れた箇所は光沢が出るといったエージングをして行きます。
A体で洗練されたシルエット
モールスキンジャケットは、元々炭鉱で働く方の作業着ですので、当然動きやすくする為、アームホールは太め、着丈は少し長め、身幅は広く、全体のシルエットはA体と言われる、ウエストの絞りがなく肩から下までストンと落ちたようなシルエットになっています。このA体は動きやすい事を優先して作られたのですが、体にフィットさせるY体に比べ、どこか可愛らしいシルエットを持っています。
※A体で有名なのはJil Sander女史で、長年アパレル業界に身を置く知人が、10年単位のサイクルで突然25年前に購入したJil Sander女史がデザインしていた時代のA体のコートを無性に着たくなる気分になると話します。私も過去にJil Sander女史がデザインしていた時代の春夏シーズンのフィールドジャケットを持っていてこのシルエットが絶妙なA体と、補強のステッチの入れ方がなんとなく、モールスキンジャケットに似ています。面白いのは、この時代のJil Sanderの服は、アームホールが割と太めです。
ヨーロッパのGジャン
フォルムとしては、襟、左胸、両脇のパッチポケット、少し大きめのフロントボタンとなっていて、ミリタリーやGジャンのような元々作業着としての使用を考え作られています。このフォルムが現代のアウターとして着ても違和感のない形になっています。私はこのフォルムが、ミリタリーより、Gジャンに近く感じ、Gジャン的に着用して楽しんでいます。
私のモールスキンジャケット
私が愛用するモールスキンのワークジャケットは、Le Mont ST Michelというメーカーが作ったもので、1930年代から1940年代に流通したものと言われています。色は黒でサイズは42のジャストサイズを選んでいます。恐らく本来作業着として着用するなら、動きやすいもうひとサイズ上を選ぶと思いますが、肩幅、身幅、着丈、袖丈が、現代のファッションスタイルに合っているのでこのサイズを愛用しています。
黒以外にブルーのものが有名で、ブルーの方がエージングが分かりやすく色味も綺麗なブルーが多いのでこちらも魅力的です。私はボトムにジーンズを履く事が多いので、黒を選んでいますが、チノやホワイトデニムなんかに合わせるなら、ブルーは上品にまとまり非常に魅力的です。
男性ファッションへの影響
フレンチモールスキンのワークウエアは、色々なデザイナーが、モチーフとしてカジュアルなアウターを作っています。有名なところでは、TOM FORDが、素材と、フォルムをそのままに、モード的な黒、少しカジュアルなベージュとカーキの中間的な色のフレンチモールスキンのアウターを作っています。
TOM FORDが手がけるとこのA体を絶妙にシェイプして非常にスタイリッシュなアウターになっています。また、ジーンズやGジャンもモールスキンを使ったものも展開していて、このアイテムはデニムと違った緊張感を持っていて、カジュアルウエアにおいてもTOM FORDの世界観がしっかり表現されたものになっています。
便利なアウター
私は、モールスキンジャケットを、ジーンズと白Tシャツや白ポロシャツの上に羽織る事が多いのですが、一枚仕立ての黒のアウターなので、どんなスタイルでも大丈夫なアイテムで、着る服を選ばない非常に便利なアウターです。
私の愛用するものは、ジャストサイズで、色は黒、ダメージもあまりないものを選んでいますが、傷んだ箇所をパッチワークで修復したものも販売されています。パッチワーク自体癖があるのですが、これが絶妙な感じで、修復されたものをあえて選んで着ても魅力的になります。
ディテール
- コットン100%
- ボックスシルエットのA体
- 肩幅、身幅、アームホールは程よいゆとり
- 袖丈や身丈は長くもなく短くもないので合わせやすいシルエット
- 黒のモールスキン
組み合わせ
- モールスキンワークジャケット : Le Mont St Michel サイズ42
- Denim : Levi’s 501XX 55Model ウエスト29.5inch:レングス30.5inch
- クルーネックTシャツ : Wasew サイズM
- 帽子 : COMES AND GOES
- 時計 : Rolex GMT Master 1675(1964)
- サングラス : TOM FORD
- ベルト : White House Cox
おわりに
今回、ヨーロッパ古着の定番、フレンチワークジャケットを紹介しました。私の基本はアメリカの古着ですが、ヨーロッパの古着と合わせると、どこか都会的なモード感のようなものが出て、それが面白く愛用しています。
ジーンズと同様、元は労働者の作業着で、その機能美が時を経て魅力的になったアイテムであり、その魅力を、現在のデザイナーがモチーフにするというのも非常に面白いと感じています。
一枚仕立てのアウターなので、春先や秋に活躍しますが、夏でも、昼は腰に巻いて、夜羽織るなど着る機会は多い非常に便利なアイテムです。コットン地なので、好みもありますが、私のように手でラフに持って、シワも気にせず着るような形で愛用しても楽しめます。
フレンチモールスキンは探すとまだまだありますが、古着の特性上、一点一点状態が異なります。サイズも合うものがなかなかなかったりしますが、自身にあうものをゆっくり探すのも楽しみではあるので、興味を持たれたら探してみるのも楽しいと思います。
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